岡口基一の「ボ2ネタ」

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最高裁事務総局行政局長,知財高裁設置への反対を表明

 内閣官房知財戦略本部内の「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」の第2回調査会で,園尾隆司最高裁事務総局行政局長は,知的財産権高等裁判所の設置への反対を表明したようです。
 知的財産権保護先進国のアメリカの司法制度においてでさえ,独立知的財産権高等裁判所の設置については,問題が多いということでその設置が見送られた(*CAFCでは知的財産権事件は約30%しか扱っていない)こと,日本全国の民事控訴事件全体が1万8270件(訴訟事件のみ。平成13年度の新受)である中で,知的財産権訴訟事件の控訴事件は年間でわずかに180件(平成13年度の新受)でしかないこと,ほかの専門事件の方が数が多いのに(例えば労働訴訟事件は,平成13年の地裁新受が,知的財産権事件の4倍近い),ほかの専門事件でも独立の高等裁判所(例えば労働高等裁判所)はないこと,日本の知的財産権事件の平均審理期間は,現在,1年3か月半(平成13年の地裁訴訟未済事件)で,裁判迅速化法に定めた2年はもちろん,諸外国の審理期間と比べても遜色ないこと,知的財産権高裁は最終ゴールではない(その後に「技術裁判官」のいない最高裁でひっくり返される可能性もあるし,最高裁は全国を「巡回」してくれない。ちなみに1審も「巡回」しない(東京か大阪に専属)から,2審だけ「巡回」してもあまり意味はないし代理人にとってはかえって不便)ことなどを丁寧に説明するしかないですね。この記事の筆者が,独立の裁判所の設置すべきとする根拠は,単に,財界の人の多くが希望しているということに尽きるようですが,裁判所の構成をどのようなものにするかという問題は,本来,特定の人たちの利益のためだけで決めてしまう問題ではないようにも思います。管理人的には,高裁長官ポストが1つ増えることは悪い話ではないのですが(^_^)。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_baba28