岡口基一の「ボ2ネタ」

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大丈夫?書記官のバイブル「裁判所職員総合研修所監修・民事実務講義案」

手形異議判決で,理由中で請求原因事実についての判断が欠落しているものがあったので,担当書記官に話したところ,裁判所職員総合研修所によるマニュアル本の記載のとおりだと言う。
そこで,その本を見せてもらうと,確かに,そこにこんな記載例が・・

裁判所職員総合研修所監修・民事実務講義案2 (3訂版)(司法協会) 242頁
手形異議判決の「事実及び理由」記載例

       事実及び理由
1 原告の請求の趣旨、原因は、手形判決記載のとおりである。
2 被告主張の人的抗弁について判断する。
  ・・・・・・
3 よって、原告の請求は理由がある。



これでは,請求原因事実について裁判所が判断しているかどうか明確じゃないので,
1項を,「原告の請求の趣旨、原因及び請求原因についての裁判所の判断は、手形判決記載のとおりである。」と修正させました。



しかし,この本は,他にも問題の個所がちらほら

例えば,243頁(3)イでは,「手形異議訴訟で、手形判決を変更することがある。この場合でも、債務名義となるのは手形判決であることに注意を要する。」とあるが,変更された手形判決が,どうして債務名義になるの?
この本は,さらに,「手形異議訴訟で、手形判決を変更する場合でも、債務名義となるのは手形判決であるから、変更判決で再度請求を認容する主文について、改めて仮執行宣言を付してはならない」(246頁ウ)と続けるが,この本自体,243頁の参考例6では、改めて仮執行宣言を付した参考例を掲げているという内容の矛盾・・。

さらに,この本は,平成18年5月に補正版が発行され,その後,この3訂版が発行されたようであるが,公示催告がなされた後には,「実務では,通常,即決で除権判決をしている」などと記載されている(222頁)。

書記官が,公示催告後に,「除権決定」ではなく「除権判決」を起案してきても,書記官の責任ではないのかもしれませんね・・・