岡口基一の「ボ2ネタ」

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所有権移転登記訴訟判決の既判力ってどんな感じでしたっけ?

所有権の取得原因として,贈与と相続を選択主張できるケースで,贈与だけを主張して所有権移転登記請求をして敗訴
その後,相続を主張して所有権移転登記請求をすることができますかね?
最高裁平成21年(オ)第1463号・同22年6月29日判決は,これができるとしていますね。理由はなにも書いていないですが・・。

この判決は,ほかにも,大変に面白い論点を含んでいます。
1つめは,当事者が,債権取得原因として,贈与のみを主張して,相続の主張をしていない場合に,「裁判所は釈明権を行使して相続の主張をさせるべきであった」として原審に差し戻している点
*主張漏れがあっても,最高裁が救ってくれるようです。よかったですね。なお,原審は,贈与は錯誤無効として,債権の取得を認めなかったものです。
2つめは,上記の1つめの判断を,上告決定の中でしているところです。実は,平成22年4月6日に同じ事件の上告受理申立ては不受理とされており,その後に申し立てられ上告事件において,職権で判断しているんですね。
*上告も,しっかりしておきましょうということですね。

この判決は,とても短い判決ですが,大変に興味深い内容を含んでいます(もちろん三小)ので,ぜひ,判例雑誌で速報で載せて欲しいですね。

大宮ローの教授も,要件事実マニュアルを賞賛していますね

「岡口「要件事実マニュアル(上下)」(ぎょうせい)は、現役の裁判官による著作であるが、司法研修所の見解の紹介に終始するのではなく、多様な思考方法があることを示唆する好著である。」
http://www.omiyalaw.ac.jp/library/lawreview/No.2/No.2-tanaka.pdf