岡口基一の「ボ2ネタ」

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建物買取請求権の行使により,建物収去土地明渡請求が全部棄却されるとした高裁判決

東京高判平成17年6月29日判タ1203号182頁

借地権の無断譲受人に対し,所有権に基づく建物収去土地明渡しを請求したところ,被告が借地借家法14条の建物買取請求権の行使した事例です。
この行使で,建物の所有権が原告に移転したことにより,「被告は,原告に対する建物収去土地明渡しの義務を免れることになるから,建物収去土地明渡しの請求は理由がないことに帰する。」としています。
なお,原告は,建物買取代金と引換えによる建物明渡請求を予備的に請求しており,こちらの予備的請求が認容されています。


上記のような建物買取請求権の行使がなされると,建物収去土地明渡請求の一部認容として,建物明渡しが認められる()ため,上記のような予備的請求をする必要がないというのがないというのが一般的な理解でしたが,そうではなく,予備的請求の追加(訴えの追加的変更)が必要とする説もあったものです(民事実務ノート3巻88頁等)。

◆この論点は,要件事実マニュアル下巻68頁以下に詳しい説明があります。
◇この裁判例は,改訂版要件事実マニュアルに,参考として,掲載する予定です。