岡口基一の「ボ2ネタ」

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「世界の児童と母性」65号

図書館で見つけました。今号のテーマは『父親・父性と子ども』。
なかなか読ませる論稿が凝縮していました。
父親が子育てにどう関わるのか,その効用は,といった内容ですが
社会的調査なども示した興味深い内容でした。


「父親と母親の行動の違いは生物学的な性別のみに帰することは適切ではなく,
父親も子どもと関わる経験を積むことで母親と同じような行動をとるようになる。」
「母性は女性の本能ではなく,子どもと関わる経験の中で育っていく。」
「生涯発達心理学では,親となることは成人発達の契機となる重要な経験と位置づけられており,」
(子どもと直接接する中で)「自分と違う物を受容する柔軟性や寛容性,
自分のコントロールが及ばないことを謙虚に受け入れつつ,諦めずにじっくりと待つ精神的な強さ,
次世代への責任感に基づく広い視野と社会的な関心などを身につけていくのだろう。」
こうした変化を<育てられる者>が<育てる者>に成熟する
コペルニクス的転回」と表現した方がいらっしゃるそうです。
<育てられる者>から<育てる者>へ 関係発達の視点から (NHKブックス)


経験的には良く理解できることですが,なかなか世間的には共通認識となってはいないと思います。
家事事件をやると特に感じますね。


遊びを通して見る,脳発達の視点から見た性差の根元などの論稿も面白かったです。
性差には胎児期に男性ホルモンに曝露することによる影響と,
生後環境から受ける刺激による神経発達に起因する影響がある。
新生児の脳のうち辺縁系視床下部,脳幹などの「古い脳」の部分は誕生時に既に性差があるが,
新皮質や海馬といった「新しい脳」の部分は誕生時には性差がない。
新しい脳に関わる性差は生後周囲の社会的・文化的反応を受けた脳発達によるもので,


「中性の新脳を持って生まれた赤ちゃんが,幼児期にはすでに,外生殖器に一致した,
男らしい,あるいは女らしい子どもにつくりあげられていることになる」


内容はこちらから読むことができます→http://www.zaidan.shiseido.co.jp/html/zai004.htm