岡口基一の「ボ2ネタ」

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ようやく登場 要件事実マニュアルの競合商品(^_^)

園部厚・一般民事事件論点整理ノート紛争類型編(新日本法規)
http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/3666026/s

管理人は,要件事実マニュアルの発売開始のずっと前から,
要件事実の本質(=法曹にとってのスキル)からすれば,
要件事実本っていうのは,迅速容易に要件事実が確認できるものであるべきであって,
間違っても,読むのに時間がかかるような大作や難解な文章であってはならないと思っていたのですが,
現実に現れた要件事実本は,学問仕立てのやたら説明の長いものや分量の多いものか,ロースクールの教材に特化したものかに二分され,
実務家である加藤新太郎判事ほかの「要件事実の考え方と実務」の出現で,ようやく,実務家のための要件事実本が出たと思ったものでした。



要件事実マニュアルは,要件事実本ってこうあるべきでしょうという,実務家側からの一つの回答だったと思うのですが,
要するに,要件事実についてのいろんな本の知識を寄せ集めただけのものですから,
こういう本を作るのは全然難しくなく,当然のごとく,各社が,後追いで,類似本を乱立させるものと思っていました。
しかしながら,類似本は,なかなか現れず,今回,ようやく,これまで要件事実本を出していなかった新日本法規からこの本が出版されたということになります。



ということで,この本,読んでみたのですが・・・・・・・・・・・。

扱ってる分野や訴訟の種類は,要件事実マニュアルとほぼ同じ・・・
*ただし,知財と破産がありません。
要件事実マニュアルは,行政事件と商事事件が,まだできあがっていないのですが,この本も,同様に行政と商事はなし。

内容は,各分野ごとに,要件事実を掲げ,当該訴訟についての簡単な説明を加えるというもので,コンセプトもほぼ要件事実マニュアルと同様

そして,極めつけは,要件事実マニュアルの引用です。
この本は,要件事実本なので,当然のことながら,要件事実についての記載が中心なのですが,要件事実の記載のほぼすべてに,引用元の文献を掲げているんですね。
この本のほぼすべての要件事実において,要件事実マニュアルが,引用元の文献として上げられており,多いページでは,1頁に,要件事実マニュアルという言葉が4回も5回も出てきます・・・・。
要件事実って,管理人が考えた訳じゃ全くないので,こんなにいちいち引用する必要は全く無いと思うのですが・・。

ということで,この本は,要件事実マニュアルのまさに類似本だとは思うのですが,あまりに先行本と同じような本にしてしまうのでは,後発本を出す意味ってあるのかなと素朴に感じました・・。

管理人が,第3版で訂正しようと思っている要件事実まで,そのままそっくり引用していただいたのが,ちょっと恥ずかしかったです・・(具体的には,請負の担保責任の要件事実)。


*ちなみに,要件事実問題集を出すときは,先行本(30講)との差別化をいかに図るかを,出版社の担当者とかなり議論をし,結局,30講はインプット用の演習本,要件事実問題集はアウトプット用の演習本という位置づけで使ってもらおうというコンセプトになり,あんなに,アウトプットに特化した商品になったものです。