岡口基一の「ボ2ネタ」

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会社の行為が商事性を帯びることの条文操作及び要件事実について判示した最高裁判決

最判平成20年2月22日
http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=2922

会社の行為が商行為であって,商事利率や商事時効が適用される場合の条文操作と要件事実について判示したもので,重要判例ですね。
まず,条文の適用ですが,商事時効について,会社法5条→商法4条1項→商法503条2項→商法522条と判示しています。
商事利率になると,会社法5条→商法4条1項→商法503条2項→商法514条となりますね。
ここは,そもそも,会社が商人かどうかという議論もあったところですが,会社が商人であると明確に判示した上で,このような条文操作をしたものです。

ちなみに,司法研修所の起案の手引(記載例集6頁)会社法5条→商法514条としています。
この手引の見解は,「当該行為が商行為であること」を直接主張するというものです。

しかしながら,この場合,会社法5条の実体要件として,「当該行為者が会社であること」に加え,「当該行為が事業として又は事業のためにする行為であったこと」も要件事実になる可能性があり,現に,そのように整理している文献もあったところです(村田渉ほか・30講389頁)。

今回の判例は,そうではなく,「当該行為者が会社であること」さえ主張すればよく,これにより,当該行為が商行為であることを推定させるというものです。
手引の見解でも,「当該行為者が会社であること」が要件事実になりますから,今回の判例の見解と,まさに,a+bの関係となります。
したがって,実体上はいずれの主張も可能ですが,訴訟においては,a+bの理論により,今回の判例の見解による主張しか許されないことになります。

この意味で,起案の手引の見解は修正される必要がありそうです。

◆この論点は,要件事実マニュアル172頁及び304頁に詳しい説明があります。
◇この判例は,要件事実マニュアル第3版に掲載予定です。