岡口基一の「ボ2ネタ」

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法曹養成制度改革 byたいちょ

上の記事↑を見ればリーガルサービスとして何が求められているか,何がその充実に必要か一目瞭然だと思います。法廷に立つこともない人間を弁護士として育てるために多額の税金を投入し,「そのために」弁護士になる者に多額の借金を負わせることが本当にこの国に必要なことでしょうか。否。断じて否です。

法的知見を活かす仕事に「弁護士が」参入することは十分有意義だと思いますが,法的知見を活かす仕事を「全て」弁護士にさせる必要はないし,その全てのニーズを「市場」として「法曹養成」で賄うが如き議論は実務「法曹」のあり方を曖昧にし,法曹のプロフェッションを損なうと思います。ロースクールが広いニーズを満たすための存在であることは別にかまわないと思いますが,それに修習という実務法曹養成制度をつきあわせるから話がおかしくなるのではないでしょうか。

何より,ロースクールが無くても司法はこれまでやってきました。ロースクールが出来ても司法修習が無くては法廷(非訟等を含む)法曹を育てることが出来ません。なのに,ロースクールには多額の税金が投入されている一方で,司法修習が短縮された挙げ句,修習専念義務があるのでその間の生活の原資は借金になります。こんな事が本当にこの国の司法のために正しいことでしょうか。

私は法廷法曹は国民のニーズのためにもきちんと質量ともに養成すべきだと思います(法廷に立つ技量のない弁護士を求める国民がいるのか,しっかり世論調査をしてみていただきたい。裁判員制度であれだけ世論調査できるのなら,法曹養成でも出来るはずです。)。そのためには修習の質をこれ以上落としては絶対にいけないし,出来れば1クール3か月に戻すべきだと思います。修習規模の限度からいえば年間1500人がいいところでしょう。それでもペースダウンするとはいえ,法曹人口は拡大するはずです。そして修習に本当に専念して貰うためには給費制維持は必要不可欠だと思います。もし,「その代わりにロースクールに多額の税金を投入している」というなら,「代わり」になり得ていない以上ロースクールを優先するのはおかしいと思います。限られた財源というなら,本当に必要有益な方に集中して投資すべきです。別にロースクールがあってもいいですが,それが理由に実務教育がおろそかにされるのは本末転倒です。ロースクールへの補助金を削ってでも,修習生の給費制を維持すべきです。ロースクール側も,自校の卒業生の将来を考えるならば,当然賛成してくれるでしょう

私は,法曹養成制度改革は破綻が目前だと思います。なのに手をこまねいて,後輩達が苦しんだり,国民に迷惑をかけるようなことは我慢なりません。
現実に即した早期の見直しを,国民に対する責任を果たすためにも実施すべきだと思います。
つまらない空想や観念論ではなく,本当に現状に即した責任の果たし方が議論されることを強く願っています。