岡口基一の「ボ2ネタ」

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時効完成後の第三者が背信的悪意者になる場合について判示した最高裁判決

最判H18.1.17

 時効取得者と時効完成後の第三者は対抗関係になりますが,この第三者背信的悪意者である場合とは,どういう場合かを判示したもので,第三者が「当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲(=時効取得者)が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するとき」に,背信的悪意者に当たるとしています。
 つまり,まとめると,
 1 占有という事実状態の法定の期間の継続(=時効の完成)を認識していたこと
 2 時効取得者との関係で,背信性を有すること
背信的悪意の要件事実になります(この結論は,要件事実マニュアル上144頁の11イ結論と同一です。なお,時効取得の主張に対し,時効完成後の第三者が登記具備したこと抗弁となり,この背信的悪意者であることが再抗弁となります)。
  時効の場合の「悪意」とは実はちょっとやっかいで,相手が「時効により所有権を取得したこと」を認識していたことを悪意としてしまうと,時効取得の全ての要件について認識していなければならないのかという疑問も生じ,とくに,不確定効果説だと,時効の援用がなされたことを認識しなければならないのではないかという素朴な疑問も生じていたところですが,最高裁は,そこまでの認識は不要としたものです。
◇この論点は,要件事実マニュアル上144頁に記載があります。
◆この判例は,改訂版の要件事実マニュアルに掲載する予定です。

http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/%24DefaultView/A6255863C214622C492570F90028A4EE?OpenDocument