司法研修所・10訂民事判決起案の手引(補訂版)(2020年、法曹会)
民法改正に対応して、以下の点が変わっています。
1 「年5分の割合による」というお決まりのフレーズが、「年3%の割合による」に変わっています。
「年3分」ではないんですね。他の記載例でも、従来「分」としていたところが、悉く「%」に置き換わっています。
もっとも、別紙登記目録だけは例外。抵当権の被担保債権の利率につき「年10%」とせずに「年1割」としています。
2 諾成的消費貸借契約に基づく貸金返還請求の請求原因(民587の2)を追加
要件事実は、①消費貸借契約の成立、②それが書面でされたこと、③金員の交付、④弁済期の到来。
このうち、③の金員の交付は、①の契約に「基づいて」なされたことが必要です(いわゆる「基づく登記」と同じ)。
よって書きは「よって,原告は,被告に対し,上記諾成的消費貸借契約に基づき,・・」などとなっています。
3 契約解除に基づく原状回復請求の請求原因を追加
原始的不能の場合を例にしています(売買の目的建物が契約成立の2日前に焼失していた)。
よって書きは要件事実マニュアル2巻41頁のものとほぼ同じです。
4 債権者代位の転用型(個別権利実現準備型-登記請求権の保全)の場合の請求原因(民423の7)を追加
要件事実は,要件事実マニュアル1巻585頁ウと同じです(甲乙間売買の成立、乙丙間売買の成立)。
よって書きは,債権者代位の一般型と同様です。
5 錯誤無効の抗弁が、錯誤取消しの抗弁に(民95)
取消しの意思表示の記載が追加されたほか、
「動機を表示したこと」の記載が追加されています。
しかし、現行法でも動機の表示は必要ですから、これは、本来必要であった要件事実を、改訂を契機に追加したものといえます。
6 保証人の抗弁として、主債務者に生じた事由による履行拒絶の抗弁(民457Ⅲ)を追加
手引事実記載例集の記載例はやや冗長であり、要件事実マニュアル1巻623頁の記載例の方がシンプルです。
また,貸金債権について,弁済期が到来して初めて発生するという新問研の見解を踏襲していますが、この見解は、学説や実務から強く批判されているものです。
7 債権譲渡の主張に対する譲渡制限特約の抗弁(民466Ⅲ)を追加
譲渡制限特約を知りながら債権を譲り受けた者からの履行請求に対し、債務者が、履行拒絶の抗弁を提出できるというものです。要件事実は、①譲渡制限特約の成立、②債権譲受人の悪意又は重過失、③履行を拒絶するとの意思の表明です。
8 時効の更新、完成猶予の記載例を追加
更新の記載例
「原告は,被告に対し,令和2年3月3日,本件貸金債権を承認した。」
完成猶予(民151)の記載例
「1 原告と被告は,令和2年5月5日,本件貸金債権についての協議を行う旨の合意をした。
2 1の合意は書面による。」
9 異議をとどめない承諾の抗弁が抗弁の放棄の抗弁へ
異議をとどめない承諾(現行民法467条1項)が削除されました。
しかし、債務者が「譲渡人に対抗し得る事由に係る抗弁を放棄する意思表示」をすれば、異議をとどめない承諾と同様の効果を生じさせることができるものです。
記載例
「被告は,原告に対し,令和4年3月3日,抗弁(1)の合意による代物弁済の抗弁を放棄する旨の意思表示をした。」
10 その他
(1) 商事法定利率(年6分)は廃止されたため、その要件事実の記載が削除されています。
(2) 未成年者取消しの抗弁の記載例で年齢が19歳から17歳に引き下がっています。
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