岡口基一の「ボ2ネタ」

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「時効取得について(背信的)悪意」に関する最高裁判例解説

法曹時報61巻1号(松並重雄調査官)

「時効取得について悪意である」とは,「多年にわたる占有の継続を認識していること」を意味するという判例最判平成18年1月17日)がありますが,その判例解説です。
この判例解説によると,「多年」とは,10年程度の期間をいうものとされています。

 従前の下級審裁判例は,時効の「完成」について悪意であれば足りるとしていましたから,かかる下級審裁判例の見解を追認したものと解していいようです。


 ところで,この判例のもう一つのキモは,「背信的な事情」はほとんどなく「悪意」しかない事例でも,「背信的悪意」を認定していた従来の実務を追認した点です。
したがって,この点についても解説をすべきだったと思うのですが,今回の判例解説は,この点の解説が完全に欠落しており,大変に残念です(判例解説が出版されるまでに追加されることを望みます)。