岡口基一の「ボ2ネタ」

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養育費・婚費の標準算定表関係の論文がいろいろ出ています

 算定表自体及びその説明は判タ1111号に掲載されていますが,これを補うものとして,以下のようなものが出ています。
1 家事事件の現況と課題(判タ社)15頁(判タ1179号に掲載されていたもの)
 大阪家裁判事らによるものです。ア子が4人以上の場合,イ権利者義務者が複数の子を分けて養育している場合,ウ義務者が再婚した場合,エ子が私立学校に行っている場合,オ義務者が権利者の住居費用や住宅ローンを払っている場合,カ義務者に負債がある場合についての説明があるほか,年金受給者の場合,高額所得者の場合,子に高額な医療費がかかる場合についても説明があります。
2 算定表の運用上の諸問題(判タ1209号4頁)
  東京家裁判事によるもので,東京家裁の基本的な取扱いだそうです。
 上記ア〜オの説明のほか,キ自営業者の総収入の算定,ク減価償却がある場合,ケ事業所得のほかに給与所得がある場合の説明があります。
3 算定表の運用上の諸問題(調停時報164号58頁)
 東京家裁判事らによるもので,上記エ,オ,キのほか,コ義務者の収入が算定表の上限を超える場合についての説明があります。
4 婚費算定をめぐる実務上の諸問題(判タ1208号24頁)
大阪家裁判事補(当時)らによるもので,上記エ〜カに加え,サ婚費分担義務の発生自体の論点,シ権利者が夫婦共有財産の一部を持ち出している場合の説明があるほか,認知した子の養育費,婚費分担の始期,家庭内別居の場合などの説明があります。
5 家事抗告審からみた家事審判(家月58巻7−8号1頁)
阪高裁判事らによるものです。上記エ〜カ,サ,シに加え,大学生の子の扶養義務の終期のほか,現在の収入不明の場合に安易に賃金センサスによるべきでないなど,広く家事審判全般にわたる注意点があります。家事事件の記録の閲覧謄写はなるべく広く認めるべきとの見解もみられます。
6 さらに,算定表の適用に誤りがあるとした仙台高決平成16年2月25日についての判評が民商法雑誌132巻4−5号696頁にあります。自動車ローンの支払についてのものです。

◇改訂版の要件事実マニュアルには,以上の全ての論文を引用する予定です。