岡口基一の「ボ2ネタ」

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評議で見えない誘導 「私たちの解釈」と壁

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/337402/
「法解釈ではなく『私たちの解釈』がスタンダードになるまでには時間がかかるだろう」
法解釈は構成裁判官の権限(裁判員法6条2項1号)ですから,それを前提に裁判員に考えていただくのが基本だと思うのですが。
法解釈の説明を「誘導」と取られるのなら,全ての評議で「誘導」がなされていると思います。最初に構成要件や処断刑の説明はしているはずなので。
でも,法律の裸のテクストを裁判員に見てもらって,好きに議論してもらう,というのは「裁判員制度の完成形」ではないと思います。
そもそも「法解釈」でないもので裁いてよいのでしょうか?

大阪地裁の1例目も刑責の対象としては共犯分も対象とした上で,量刑事情として被告人の密輸量を基礎としたとの構成のようです。確かにあそこまで減刑し,その中心的事情に被告人のみの密輸量を示すと,実際の判断上は共犯とは別個の事件のように量刑したとの誤解も招くでしょうね。現に共犯事件として組織的になされた場合には,同量の単独事件と量刑上差異が生じるべきなのにその点の配慮が量刑上なされた形跡も報道では見受けられませんでしたし。控訴審の判断を見てみたかったという実務家は少なくないと思います。