本訴反訴がある場合に,
反訴において,本訴請求権を自働債権とする相殺の抗弁は,認められないのが原則です。
なぜなら,本訴と反訴の弁論が分離されてしまうと,本訴請求権について別々に判断されてしまい,既判力のある判断の矛盾が生じかねないからです。
しかし,これには例外が二つあります。
一つは,本訴請求権が時効消滅している場合です(最判平成27年12月14日)。
この場合は,本訴反訴が分離されても,本訴の方では時効消滅との判断がされ,反訴の方では,時効消滅前の本訴請求権の存否(民508)の判断がされるため,判断の矛盾は生じないからです。
もう一つの例外が,今回明らかになりました。
それは,本訴が請負報酬請求で,反訴がその請負の目的物の契約不適合に係る損害賠償請求の場合です(最判令和2年9月11日)。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89700
この場合,そもそも,本訴反訴の分離が許されないことになりました(こないだお話ししたことです)。
そのため,分離による判断の矛盾が生じるおそれがありませんから,この場合も,反訴における,本訴請求権を自働債権とする相殺の抗弁が認められるというわけです。
*ちなみに,本訴反訴がある場合に,本訴において,反訴請求権を自働債権とする相殺の抗弁は認められます。この場合の反訴は,本訴の相殺で反訴請求権が一部消滅し,その残部について反訴で請求をしているという,予備的反訴と考えられるからです(最判平成18年4月14日)。
要件事実マニュアル1巻705頁参照
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